東洋学園大学教授の朱建栄氏による、ウイグル人ジェノサイド否定発言に抗議し、 同教授の発言撤回と謝罪を要求する声明文

2021年2月9日

東洋学園大学 学長 旦 祐介 先生
東洋学園大学 理事長 愛知 太朗 先生

世界モンゴル人連盟 理事長 楊海英(大野 旭)

南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)会長 ショブチョード・テムチルト

東洋学園大学教授の朱建栄氏による、ウイグル人ジェノサイド否定発言に抗議し、
同教授の発言撤回と謝罪を要求する声明文

去る2021年2月5日、BS日本テレビの「深層NEWS」において、自民党の佐藤正久外交部会長と東洋学園大学の朱建栄教授が出演しました。佐藤正久氏は、アメリカの国務長官同様、現在中国政府が新疆ウイグル(東トルキスタン)で行っている弾圧政策を「ジェノサイド」と認定する発言を行いましたが、朱建栄教授は「2019年に各地から新疆に2億人が観光に行った。本当にウイグル族が抑圧されているところであれば、2億人が遊びに行けるだろうか」という趣旨の発言を行い、事実上ジェノサイドどころか中国政府の弾圧すらも疑問視しました。
私達は南モンゴル(内モンゴル自治区)の人権問題、環境問題に取り組む団体として、この朱建栄教授の発言に断固抗議するとともに、東洋学園大学学長旦祐介先生に対しても、朱教授のこのような人権感覚は、貴大学の不名誉になることを申し上げたいと思います。
まず、ウイグルにおいて中国政府が「再教育センター」という名のもとに、事実上の収容所を建設し、罪もないウイグル人を強制収容していること、伝統信仰であるイスラム教への進行のみならず、ウイグルの伝統文化や生活様式までも禁じていることは、国際社会においてここ数年来、著名な人権団体であるアムネスティ・インターナショナルやヒューマン・ライツ・ウオッチにより提起され、また、国連の場においてもたびたび指摘されています。また、ごく少数ではありますが収容所から解放されたウイグル人たちの証言によれば、そこでは拷問、洗脳、また避妊手術や正体不明の薬品の投与、さらには臓器売買なども行われている可能性が明らかになっています。
朱教授がこれらの証言や国際社会の声を否定する論拠にしているのは、ウイグルの地に多数の中国人が観光に向かっているというものです。仮にそれが事実であるといたしましょう。しかし、わが南モンゴルは、中華人民共和国建国以来、多数の中国人が観光どころか移住してまいりました。その結果行われたのは、文化大革命時代を頂点とするモンゴル人ジェノサイドです。この歴史的事実に関しては、静岡大学教授楊海英氏の著作、また中国人自身の文化大革命時代の資料、ならびに中国共産党の公式発表からいくらでも証明することができます。ウイグルの地に中国人が自由に移住もしくは観光を行っていることは、ジェノサイドや弾圧を否定するものでは全くありません。
そして、南モンゴルにおいて、2018年以後、母語であるモンゴル語教育が中国政府の方針により減らされ、現時点ではほぼ抹殺されたこと、それに対し同地のモンゴル人のみならず、私達を含めた国外のモンゴル人が連帯して抗議していることを朱教授が知らぬはずはありません。民族から言葉を奪う事、これは文化的なジェノサイドです。現地で抗議するモンゴル人は高·中学生を含む30万人にのぼり、そのうち1万人以上が逮捕され、一部の人々は自殺に追い込まれています。私たちはこの民族的経験からも、ウイグルにおいて行われている中国政府の政策はジェノサイドだと確信しております。
私達は朱建栄教授に対し、番組での発言の撤回と謝罪を求めると共に、ジェノサイドを行う中国政府に事実上加担する姿勢を改めない限り、同教授が日本の大学で若い学生たちに、正しい知識や国際感覚、人権意識を教育するにふさわしい人物ではないと判断せざるを得ません。朱教授の発言撤回と謝罪がなされるまで、東洋学園大学は学問の良心と、自由と人権を守る立場から、同教授を休職もしくは罷免すべきであることを、私達はあらゆるジェノサイドに反対する立場から求めます。