国会内シンポジウム
「中国の民族区域自治制度とウイグルジェノサイドの実態」登壇報告
2026年2月25日、国会内において、日本ウイグル協会主催のシンポジウム
「中国の民族区域自治制度とウイグルジェノサイドの実態」が開催されました。
本シンポジウムには、日本ウイグル協会、台湾民主基金会、世界ウイグル会議などが参加し、中国政府による新疆ウイグル自治区での人権侵害の現状と、国際社会の対応について議論が行われました。
南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)共同代表オルホノド・ダイチンは、セッション3「民族団体の連帯強化」に登壇し、スピーチおよびパネルディスカッションに参加しました。
ダイチンは演説の中で、
・民族抹消は国内問題ではなく国際秩序の問題であること
・南モンゴルで試された同化モデルがウイグルへ拡大している構造
・自己決定と主権の原理が侵食されることの安全保障的意味
を指摘し、民族団体間の連帯の制度化の必要性を訴えました。
南モンゴル問題、ウイグル問題、チベット、香港の諸問題は個別事象ではなく、中国共産党による統治モデルの構造的帰結であることを強調し、日本国内における横断的政策連携の枠組み構築を提言しました。
以下に当日のスピーチ全文を掲載いたします。
民族抹消と国際秩序
― 南モンゴル問題は国内問題ではない ―
オルホノド・ダイチン
南モンゴルクリルタイ(世界南モンゴル会議)共同代表
民族を消すことが許されるなら、
国境もやがて消されます。
なぜなら、民族を抹消するという行為は、
国際秩序の根幹である
「自己決定」と「主権」の原理を破壊するからです。
私たちは本日、
被害を語るためだけにここにいるのではありません。
私たちは、
国際秩序の最前線に立っています。
Ⅰ.南モンゴルで起きていること
南モンゴルでは、2020年以降、
モンゴル語による教育制度が事実上解体されました。
歴史教科書は書き換えられ、
民族の記憶は国家の物語へと再編されています。
文化は観光資源として展示されます。
しかし言語は教室から消え、
思想は統制され、
次世代は構造的に同化されます。
これは自然な社会変化ではありません。
国家による設計です。
民族を物理的にではなく、
制度的・構造的に解体する政策です。
Ⅱ.それは南モンゴルだけの問題ではない
南モンゴルで試された同化モデルは、
新疆ウイグル地域で大規模に展開されました。
監視社会、再教育施設、強制労働、出生抑制、家族分断。
チベットや香港においても、
形は異なれど、
国家への絶対的忠誠を要求する統治構造は共通しています。
これは偶発的な政策ではありません。
体系です。
Ⅲ.なぜ国際問題なのか
ここで明確に申し上げます。
中国共産党の民族政策は、
国内統治の問題ではありません。
それは国際秩序の規範を再設計しようとする試みです。
民族の自己決定を否定する秩序。
人権を相対化する秩序。
主権を絶対化し、外部の関与を排除する秩序。
この論理が広がれば、
国際秩序は戦争によってではなく、
規範の書き換えによって変質します。
南モンゴルはその原型でした。
Ⅳ.日本の安全保障との接続
だからこそ、この問題は中国の内政ではありません。
国際問題です。
そして、日本の安全保障とも深く関係しています。
台湾有事が議論され、
東シナ海の緊張が語られる中で、
民族抹消政策を「内政」と呼び続けることは
戦略的整合性を欠きます。
民族の自己決定が否定される秩序は、
主権国家の領土保全も不安定化させます。
価値を守れない国際秩序は、
やがて国境も守れなくなります。
Ⅴ.提言
第一に
日本国会内に、既存の議員連盟を横断する
常設の政策連携枠組みを設けるべきです。
南モンゴル、ウイグル、チベット、香港、台湾。
これは個別問題ではなく、構造問題です。
横断的な連絡体制こそが、
日本の「自由で開かれたインド太平洋」理念を
制度的に支える基盤となります。
理念は制度化されて初めて信頼を得ます。
第二に
日本政府は、
ジェノサイド認定に向けた超党派の議論を開始すべきです。
ジェノサイドは過去の歴史概念ではありません。
現在進行し得る現象です。
言語抑圧、強制労働、出生抑制、家族分断。
これらが民族の存在そのものを解体する目的で
体系的に行われるならば、
それは重大な国際法上の問題です。
沈黙は中立ではありません。
沈黙は抑圧を固定化します。
結語
私たちは被害の競争をしているのではありません。
自由を守る側の連帯を求めています。
民族を消すことが許されるなら、
国境もやがて消されます。
しかし、
私たちが連帯するなら、
秩序は守られます。
南モンゴルは消えません。
ウイグルは消えません。
チベットは消えません。
香港は消えません。
歴史は、
連帯する者の側にあります。
ありがとうございました。