(株)小学館の月刊誌「コロコロコミック」2018年3月号(2月15日に発売)に掲載されている漫画「やりすぎ!!!イタズラくん」(著者:吉野あすみ氏)に、チンギス・ハーンの肖像画が登場し、それに卑猥ないたずら書きがされる一コマがありました。チンギス・ハーンは、私たちモンゴル人にとっては祖先であるとともに信仰の対象でもあり、このような侮蔑的な表現に対し、ここ日本でも多くのモンゴル人が抗議の声を上げています。私たちもモンゴル人として、民族の英雄を汚されたことへの怒りを共にするものです。
私たちは日本における言論・表現の自由は最大限に尊重されるべきものと考えており、漫画表現が権威への風刺や諧謔を伴うものであることも理解しているつもりです。しかし、その上でなお、他の民族にとっての英雄や信仰の対象である偉人に対して、一定の敬意は払われるべきものと考えます。たとえば外国の漫画家が、日本国の象徴である皇室に対し、このような表現を風刺だと言って行った場合のことを想像いただければ、私たちの怒りは理解できることと思います。
同時に私たちは、作者や編集部に、モンゴル人に対する特別な差別の意図があったとは考えておりません。今回の事件は、おそらくモンゴル人の歴史や精神に対しあまり関心のない作者と、多忙を極める編集作業の中チェックが不足した編集部により、このような表現が見過ごされて出版されてしまったものでしょう。その上で、私たちは出版社が一定の謝罪を表明したことを受け入れるとともに、やはり直接の表現者である作者もまた率直な謝罪を表明することと、単行本化の際はこの回を削除いただくことを求めます。そして、日本の未来を担う少年少女が多く読む漫画雑誌であるからこそ、今後表現においては一層の注意を払ってくださることを求めます。
しかし、この漫画表現はいかに私たちモンゴル人にとって怒りを呼び起こすものであったとしても、不注意から生まれた、しかも一コマのものにすぎません。より重大なのは、今南モンゴル(内モンゴル)において、中国共産党政府が行っているモンゴル人への人権弾圧と環境破壊です。そして中国政府は、英雄チンギス・ハーンを、モンゴルの英雄ではなく、中国の、つまりは漢民族の英雄と偽造しています。私たちは一つの漫画への抗議を怒りを込めて行うのと同時に、中国共産党政府に対し、より大きな抗議の声をあげ、現実に苦しめられているモンゴル人を救うことにこそ力を尽くさなければならないはずです。小学館への抗議デモはもちろん正当な抗議行動ですが、より大きな抗議の声を、中国大使館へ、そして中国政府に向けていくことを、この機会に全てのモンゴル人に訴えます。そして小学館には出版社として、世界の人権や言論の自由を守り圧政に抗議する立場から、中国政府の南モンゴルにおける弾圧に対し、より大きく、SAPIOをはじめとする貴社の雑誌や媒体等で報じてくださることを求めます。
南モンゴルクリルタイ
2018年2月28日
なお、上記文章を南モンゴルクリルタイとして(株)小学館に送付しております。