ダルハド・ハスチョロ:「在日モンゴル人の未来」

ダルハド・ハスチョロ氏(世界モンゴル人連盟理事長)スピーチ紹介

2025年10月9日、衆議院第一議員会館で開催された国際フォーラム「南モンゴル自由・独立運動の歴史と展望」において、世界モンゴル人連盟理事長のダルハド・ハスチョロ氏が「在日モンゴル人の未来」をテーマに心のこもったスピーチを行いました。

ハスチョロ氏は、南モンゴルの自由と人権を支援してくださる日本の皆様への感謝を述べたうえで、在日モンゴルの子どもたちが母語で学べる環境の必要性を訴えました。とくに、「モンゴル語で教育を受けられる学校」の設立こそ、南モンゴルを支援する大きな一歩であり、次世代の希望を育むものだと強調しました。

「言葉は民族の魂であり、母語教育はアイデンティティを守る最も大切な手段です」と語るハスチョロ氏の言葉には、未来への強い願いと温かい郷土愛が込められていました。日本でモンゴル語と文化を次の世代へと受け継ぐこと――それが、モンゴル人と日本人を結ぶ新たな絆になるという力強いメッセージで締めくくられました。

以下に、当日の講演原稿の全文を掲載いたします。


国際フォーラム「南モンゴル自由・独立運動の歴史と展望」    提案(スピーチ)

 皆さんこんにちは、今年2月より世界モンゴル人連盟理事長を務めましたダルハド ハスチョロと申します。南モンゴルを支援する議員連盟の先生方をはじめ登壇者の先生方、来賓の皆様、関係者の皆様本日は誠にありがとうございました。

 今日は先人達の自由のための百年歴史を振り返ることができとても勉強になりました。登壇の皆さんより、主に南モンゴル現地における過去と現在について歴史、人権、環境などの各面から詳しいお話しがありました。ここで私は、在日モンゴル人の話しをします。過去や現在ではなく未来について語ります。在日モンゴル子ども達のために一つ提案且つお願いがあります。未来のための提案とお願いです。文章にまとめて来ましたので読み上げて今日のこの素晴らしい場に是非皆さんと共有したいと思います。

 「毎年ゴールデンウィークに合わせ都内で開催している日本最大級のモンゴル祭りハワリンバヤルをご存知の方もいらっしゃると思います。そこで久しぶりの友人や知人に会ったりします。今年のハワリンバヤル初日5月4日に会いました妻の友人であり僕の友人でもある1人の南モンゴル人お母さんの話しを紹介したいと思います。そのお母さんは議員連盟のことを知っており、感謝の気持ちいっぱいでした。世界中に唯一日本だけに国会議員による南モンゴルを支援する議員連盟があることは本当に有り難くて、心強いと述べた後「今のところ南モンゴルへの支援は気持ち態度でしょうか?」と聞いてきます。答える代わりに何か是非やってもらいたいことが有れば教えて欲しいと言ったら迷わずに日本にいるモンゴル人の子どもたちが母語で教育を受けられる学校を作っていただけたら何よりも大きな支援になると返ってきました。自分もこの方の気持ちは痛いほど分かります。私にも子供が2人おり同じ希望と悩みを持っています。日本にいるモンゴル子どもたちをモンゴル人に育つ、即ちモンゴル語とモンゴル文字ができるようにすることはモンゴル人親たちが直面している最大の難題だと言っても過言ではありません。これから親になる人たちもほとんど全員が直面する課題です。この問題のもっとも効果的で、もっとも良い解決方法はモンゴル学校を作るほかありません、日本にモンゴル学校を設立することは在日モンゴル人たちの共通の夢であり。未来に対する希望です。教育は全人類の普遍的価値観であり、人間社会の基礎建設中の基礎であります。母語で教育を受けることは人間の基本的な権利であり、アイデンティティを受け継ぐもっとも重要な手段です。今のままの現状が続くと南モンゴルにおけるモンゴル語は下手をすると,あとの1、2世代で消滅してしまう危機に直面しています。

 約100年前の満州国時代に日本が南モンゴルの東部に軍事学校を始め学校教育システムを作り、日本語とモンゴル語による教育を行い、南モンゴルの近代化に壮大な影響を与えました。同時代西の徳王政権である蒙古聯合自治政府も親日政権でした。これら日本との繋がりが後にモンゴル人悲劇の一原因にもなりますが、話しを戻すと現在こそ逆バージョン、つまり在日モンゴル人にモンゴル語と日本語で教育を行うことが可能ではないでしょうか?今こそモンゴル学校が非常に必要とされています。太陽の国日本だからこそ歴史的深い関係を踏まえた上消滅危機に直面している南モンゴルのモンゴル語教育を救うために大きな役割を果たすことができると信じています。東京朝鮮学校などの実例もあり、日本でモンゴル学校を設立することは決して内政干渉にはなりません。教育や人権、文化保護は文明人類及び国際社会の普遍的な価値認識であり、義務と責任でもあります。中国によるジェノサイドの犠牲になっている南モンゴル人たちに希望と光と未来を与えることによって日本は人類文化の保護と発展そして世界平和のために大きな貢献ができます。日本で学校教育を通してモンゴル言語と文字文化が残り続くことでモンゴル人と日本人の間により一層深い関係と絆ができることには確信しています。そして我々の子孫たちは子から子に世々代々日本の恩恵を伝え続けるでしょう。

 モンゴル学校の設立こそ南モンゴルを支援する第一歩になるべき、且つ最大の支援であることは間違いないです。

 日本にモンゴル学校を設立する件をぜひともご検討していただけるようよろしくお願い致します。

 モンゴル人に希望と光と未来をよろしくお願い致します。」

 いつも思いますが私たちモンゴル人は「郷思い?」モンゴル語で《ᠨᠤᠲᠤᠭᠰᠠᠭ》(Nutugsag)と言い、とにかく故郷への思いと感情がとても強い人種だと感じます。これが人間としての素晴らしい資質であることには間違いないですが、しかし今のままの現状でこのまま何もできずに居続けていたら大切な故郷ともっと大切なモンゴル人両方ともなくなってしまう可能性が非常に高いです。中国にとって南モンゴルの広い土地と広い土地にある資源が、前の方のお話しにも出てきたレアアースなどの資源が必要でありモンゴル人は全く必要ありません、邪魔でしかないです。だからジェノサイドをやっています。

 最悪の話し、例えば、土地と人或いは故郷とモンゴル人の二つの内どちらか一つ選択せざるを得ない場合には人を優先するべきと考えます。人さえ残れば、モンゴル人がモンゴル人のままで残り続くことができれば、そしてモンゴル人が強くなれば故郷を取り戻すことはできるし、どこか新しい故郷を作ることも可能です。地球は人類の故郷です。

 人間を残すためには一度中国の殖民地になってしまった南モンゴルを出て行く必要があります。意識しているかどうかは分かりませんが一部の人々が海外に出て来ています。その中でも飛び抜きこの日本に南モンゴル人が一番多くいます。一つ大きな力になる可能性があると見ています。我々の世代がモンゴル人のままでいられることはほぼ間違いないですが大きな問題が一つあります。それは次世代のモンゴル人、即ち在日モンゴル子ども達がモンゴル名の外国人になってしまったら全く何の意味もなくなります。次世代をモンゴル人に育つにはどうしてもモンゴル語による学校教育が必要です。南モンゴルを支援する議員連盟の先生方を始め日本国民を代表する政治家たちに日本にモンゴル学校を設立する件をご検討していただきたいです。是非日本の国策として考えていただきたいです。どうかよろしくお願い致します。

令和 7 年 10月 9 日(木)

衆議院第一議員会館にて

第三セッション「人権・自由・どくろいつ運動の未来展望」パネルディスカッションの登壇者たち
登壇者(世界モンゴル人連盟理事長ダルハド・ハスチョロ氏、二列目の左から二番目)