オルホノド・ダイチン:南モンゴル過去・現状・未来

【2022年9月23日 東京 】 2022年9月23日 、東京都内で 「チベット・ウイグル・南モンゴル セミナー中国共産党の占領地:共通基盤の構築 」が開催された。

チベット亡命政府首席大臣ペンパ・ツェリン閣下が訪日に際して、 チベット・ハウス・ジャパン、Save Tibet Network主催の「チベット・ウイグル・南モンゴル セミナー中国共産党の占領地:共通基盤の構築」テーマの会議が東京都文京区シビックセンターにて開催され、来日中のチベット亡命政府のペンパ・ツェリン首席大臣と日本ウイグル協会会長のケリム氏、南モンゴルクリルタイ常任副会長のオルホノド・ダイチン氏、国家基本問題研究所理事長の櫻井よしこ女史等による講演でした。チベット国会議員連盟会長の下村先生、ウイグル国会議員連盟事務長の三ツ林先生もご参加くださいました。セミナーの司会は石川先生、開会あいさつはダライ・ラマ法王事務所代表のアリヤ博士で、閉会のあいさつは Save Tibet Network 会長の牧野先生でした。

チベット、ウイグル、南モンゴルの代表から各民族の状況と日本の支援のお願いを櫻井よしこさんからは、習近平とプーチンという極悪人と国際社会は戦わなければならない、その第一歩としてこの3民族を助け、国際社会に告発していかなければならないと話されました 。

以下は、南モンゴルを代表して講演された南モンゴルクリルタイのオルホノド・ダイチン 常任副会長の講演原稿です。

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チベット・ウイグル・南モンゴルセミナー

中国共産党の占領地:共通基盤の構築

南モンゴル過去・現状・未来

オルホノド・ダイチン(南モンゴルクリルタイ)

まず、「内モンゴル」という言葉がありますが、これはあくまで中国政府のつけた名称です。私たちは中国の「内」か「外」という分類ではなく、今は、モンゴル人の国は二つに分断され、一方は中国の植民地化であるという意味で「南モンゴル」という名称を使っています。そのことをお断りしておきます。

モンゴルの歴史は、中国人、つまり漢民族との長い闘いの歴史でもあります。モンゴルは固有の歴史、領土、文化、そして言語を持っており、近代においては中国の侵略に抗して戦ってまいりました。1911年には清帝国から独立し、1913年には、同じく独立国のチベットとの間に相互承認条約を締結しています。しかし、1915年、ロシアと中国両国の強い干渉を受け、キャフタ会議によって南北に分断されます。北モンゴルはのちにソ連の影響下で社会主義国家となり、南モンゴルは、内モンゴル人民革命党による独立運動が続きましたが、第二次世界大戦後、ヤルタ会談は、当事者のモンゴルがいない中、南モンゴルを中国に併合させることを決定してしまいました。

それでも、中国国内で平和的な自治が認められればまだよかったのですが、中国共産党政府は、まさに南モンゴルを植民地として収奪し、当初から伝統的な遊牧文化を否定します。ここにおられるチベット亡命政府の皆様にはまことに心苦しいことですが、中国政府のチベット侵略時には、モンゴル人騎兵が強制的に戦わされました。その意味では、今私がここでチベット亡命政府の方と共に、中国共産党に民族自決を訴えていることに、私は歴史の重みを感じております。

文化大革命時代には、モンゴルでまさに現在ウイグルで、またチベットでも行われたのと同様の、民族ジェノサイドが繰り広げられました。モンゴル人であることが罪とされ、拷問と投獄の中で多くの人たちが犠牲になりました。その数は中国政府が認めただけでも約3万人、拷問で障碍者にされたり、牢獄から出てすぐ亡くなった人たちを入れれば、おそらく数十万単位となるでしょう。

それ以後も、中国政府は南モンゴルを植民地とみなし、改革開放政策以後も、乱開発による環境破壊、そして今回の母語教育の禁止といった「文化ジェノサイド」を継続しています。母語を奪われ、モンゴルの伝統を奪われたモンゴル人は、既にモンゴル人とはいえません。

私たち南モンゴルクリルタイは、国内で自由な発言ができないモンゴル人たちに代わって、自由な民主主義国日本で、南モンゴルの実態を訴える活動を続けています。これは人権問題であり、環境問題でもありますが、同時に、中国政府が本来独立する権利を持つモンゴル人を植民地化し、自治権すらも与えない状態に置いていることです。これを解決するには、民族自決権の確立以外に道はありません。私たちの最終目的は、モンゴル人による南モンゴルを実現することであり、それだけが、逆に将来の中国人との友好にもつながります。主人と奴隷との間に友情はあり得ないのです。

植民地支配も、民族ジェノサイドも、20世紀の人類の負の遺産です。それが今も世界に、しかも国連の常任理事国において行われていることを許してはなりません。これはチベット、ウイグル、南モンゴルの問題ではなく、世界の問題であることを訴えたいと思います。