南モンゴルクリルタイ—声明文

南モンゴルクリルタイ

声明文

2011年5月11日に南モンゴルの若者メルゲンが、モンゴル人の生活の源である草原を、中国人開発者の手から守ろうとして無残に殺された。今年はメルゲン殺害事件が起きてから10周年を迎える。

 南モンゴルは、中国共産党の支配下におかれてから74年が経過している。20世紀前半において、南モンゴル人は自立自決・独立のために徹底的にたたかってきた。しかし、当時の世界情勢、大国のエゴイズムや弱小民族を分割して統治する企みなどにより、残念ながら南モンゴルは中華民国、続いて中華人民共和国、つまり中国共産党独裁政権という、いずれも中国人の国家の事実上の植民地とされてしまった。

中華民国は、南モンゴルを分割して統治する形で支配してきた。それに対して、中国共産党は、我々はモンゴル人の自立自決のためのたたかいを最初は応援すると嘘をつき、モンゴル人を騙す形で自分たちの支配下においたのである。

 中国共産党の支配下に入ったこの74年間は、私たちモンゴル人にとって苦難の道のりだった。私たちモンゴル人は「土地改革」「人民公社」「反右派闘争」「大躍進」「文化大革命」といった相次ぐ政治運動の荒波にもまれ、30万人以上のモンゴル人が尊い命を失い、約100万人のモンゴル人が逮捕・拘束され、拷問などにより心身とも深い傷を負った。その後、改革開放政策の名のもとで行われた地下資源開発によってモンゴル人の土地が奪われ、多くのモンゴル人は途方に暮れる日々を送っている。そんななか、中国共産党は、2020年9月からモンゴル人の子どもが通う、通称「民族学校」において文系の授業をすべて漢語で行うことを決定した。

中国共産党は、南モンゴルを支配下においた後、モンゴル人やモンゴル文化に対する弾圧を一日も緩めなかった。文化大革命の時代には、多くのモンゴル人の尊い命が奪われ、かろうじて命を取り留めたモンゴル人も心身に深い傷を負ったが、今日、中国共産党は新たな手法でモンゴル人の精神世界を破壊しようとしている。土地を奪い、草原の生態系を壊すなどモンゴル人の生活の基盤を崩すだけではなく、モンゴル人から自民族の言葉を話す最低限の権利さえ奪おうとしている。これは紛れなく文化的ジェノサイドである。

 中国は国連における安保常任理事国であり、国際社会においても率先して国際法を遵守すべき立場にある。しかし、中国は国際法に背くばかりではなく自国の憲法で明記している「各民族は一律に平等である」という条文にすら違反している。

 南モンゴルクリルタイは自由と平等、人権、民主主義、そして民族自決権の尊重を訴えている。民主主義こそ人類が目指すべき正しき道であると信じている。ゆえに、南モンゴルクリルタイは、他民族の自決権を認めない不法な暴力政権である中国共産党に対し、断固としてたたかっていく所存である。

 南モンゴルの若者メルゲンが殺害された日は、74年間にわたって中国共産党に弾圧されてきた南モンゴル人にとって記念すべき特別な日である。私たちは団結してたたかわないと待っているのは「死」のみであるということを、メルゲンの死が語っている。ゆえに、南モンゴルクリルタイは、5月11日を南モンゴル人が団結する日(「南モンゴルの日」)とすることを全世界の南モンゴル人に向けて呼びかける。同時に自由や平等、人権や正義を尊重する国際社会に、5月11日を「南モンゴルを応援する日」とし、私たちと一緒にたたかうことを求めている。

 私たちは本日、「南モンゴルの日」に、以下の五項目を中国共産党に対し要求する。

◆南モンゴルで行っている文化的ジェノサイドを直ちに止め、文化の多様性を認め、民族学校においてモンゴル語による授業を復帰させることを求める。

◆中国政府が行っている、南モンゴルに対する漢人の移民政策を直ちに停止し、モンゴル人の人権及び権利を保障することを求める。

◆モンゴル人が自民族の言葉を守ることは、中国憲法によって保障されている権利である。よって自分の言葉を守るために立ち上がったモンゴル人に対する不当逮捕は許されない。逮捕・拘束したモンゴル人を直ちに保釈するとともに、法に基づいて損害賠償を行うことを求める。

◆当局に拘束されている南モンゴルの女性人権活動家ヤンジンドルマや、その支持者らを直ちに保釈し、今後においても軟禁・拘束などを一切止めることを求める。

◆南モンゴルにおいて行われているすべての植民地政策を直ちに中止することを求める

 そして「南モンゴルを応援する日」に、私たちは全世界に向けて次のことを呼びかける。

中国政府による南モンゴルの環境破壊や、モンゴル人の言語、歴史や文化を消滅させる文化的ジェノサイドを直ちに止めることを、世界各国から中国政府に強く要求していただきたい。また、中国政府がこの要求に応じない場合、2022年北京冬オリンピックをボイコットすること、または中国に対して経済制裁を課すことを求める。

南モンゴルクリルタイ

2021年5月9日